「音楽舞踊全交感大綱」への私的な道筋

 昔から美術もダンスも映画も、音楽と同じように、時にはそれ以上に見てきた。興味を持つとそれをやってみたくなるという悪い性分で映画はさすがに初期費用が大変だから手を染めなかったが、ごちゃごちゃしたオブジェを作ってみたり、ダンスのワークショップに通うなんてこともした。幸か不幸か瞬く間に挫折し、自分でやるのは音楽、と固まって今に至る。
 美術に関しては今は良き観客、だと思う。だがダンスに関してはそうはいかない。舞台に無闇に音楽がかかるからだ。作り手の立場から聴いてしまうからなのか、妙に気になることが多くて落ち着かない。要するに面白い、どころか納得いく音楽の使い方に出会うことが少ないのだ。ダンスが良くても腑に落ちない。そこに昔のワークショップで味わった劣等感なんかがない交ぜになるともう始末に負えない。愛憎渦巻く・・・。
 幸いにして山田うんというダンサーと出会うことで、今はダンスと音楽にどういう関係がありうるのか、具体的にあれこれ考える機会を持っている。だが他の音楽家にとってダンスは興味ある存在なのか?他のダンサーにとって音楽は何なのか?
 今度の企画「音楽舞踊全交感大綱」での私の目論見はそんな個人的な興味にすぎない。すぎないのだがそこからダンスへも音楽へもいろんな問題提起が可能なはずだ。音楽にとっての視覚、肉体は何なのか。ダンスは総合芸術なのか。時間芸術、上演芸術におけるコミュニケーションの土台は何か。ひとつの解答を得たいわけじゃない。いくつもの鮮烈な答えに出会いたい。  


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