日時:1999年8月22日(日)2時30分〜5時(開場2時)
<告知文>
米本実(ホームページはこちら)
足立智美(ホームページはこちら)
<当日のプログラム>
米本実
米本実+足立智美
〜休憩〜
足立智美
宮木朝子
- 作者による解説 -
足立智美
米本実
2)ORGOPPY(1998)
3)マン−マシーン・インターフェースに関する考察 No.1(1999)
宮木 朝子/Making of 『Echoraly3-CELAN fragment』
1.解説:資料をもとに簡単なレクチャー
<当日の様子> 解説は足立智美、写真は福永綾子による。
会場:三鷹市芸術文化センター第一音楽練習室(三鷹駅徒歩12分)
入場料金:1000円
入場者数:24人
宮木朝子(ホームページはこちら)
宮木朝子は一応は現代音楽の作曲家ということにはなるだろうが、映像、ダンスとのコラボレーションや小劇場のための作品など、枠にとらわれない活動を展開している。声をはじめとするアナログ音源をデジタル加工してつくられた彼女の電子音楽は、繊細な強度と劇的ともいえる表現力を兼ね備えている。
MIDIケーブルを切断し、デジタル信号を直接聞く。テープヘッドでフロッピーディスクをこする。こんなデジタルテクノロジーを無理矢理アナログ化する作業から、アンティークなICチップを使ったシンセサイザーの製作、ネオン管発振によるトラウトニウムやルッソロのイントナルモーリのミニチュアなどなど、米本実の作る楽器群は今世紀の音楽/テクノロジー史を遡行、批評する。自作電子楽器によるパフォーマンス。
コーネリアス、思い出波止場をはじめとして、多くの音楽家の愛用楽器となっている「自主製作電子楽器」トモミンの他、エレクトリック/アコースティックの多くの楽器を創作している足立智美。簡便安価奇天烈楽器群によるパフォーマンス。
足立智美
1)エレクトリック・ギターとギター・アンプを伴う電子装置による音楽
1)nocturne(1999)
2)ORGOPPY(1998)
3)マン−マシーン・インターフェースに関する考察 No.1(1999)
即興演奏
2)トモミン+光センサーの演奏
3)自作のアーコスティック楽器の演奏
Making of 『Echoraly3-CELAN fragment』 -音響映画の試み
市販の電子楽器、電子装置は価格、重量、インターフェイスなどの面で不便なものが多い。最近はテクノブームのせいでアナログ・インターフェイスの簡便なエフェクター類も増えてきたが、逆にそれらはユーザー設定に融通が利かず用途が狭いものがほとんどである。自分に必要なものがあれば、作ってしまえというのが以下の自作楽器の基本的な立場である。
1)は自作の2chミキサー(トーンコントロール付き)2台、パッシヴタイプのリング変調器、トモミン(1石弛緩発振器)とエレクトリック・ギター、ギター・アンプによる音楽。このリング変調器は原価1000円で作ったもの。現在市販で手に入るリング変調器で外部キャリア入力が可能なものは数十万円以上のものしかない。ここで使うのはギター出力をトモミンからの発振音をキャリアとして変調するというだけの回路だが、ギターとアンプ間及び変調器の入出力間にフィードバックが仕掛けられている。ここでの主役は電子と空気と物体の自然運動であって、ギターはその運動が恒常状態になるのを妨げ、撹乱するために用いられる。回路はデイビッド・バーマンの1966年の作品"Wave Train"と"Players with Circuits" に似通ったもので、この演奏はデジタル・テクノロジーの発達によって過去のものとなった、60年代アメリカ電子音楽の持っていたある種の思想、精神に対するオマージュである。
トモミンの最初のヴァージョンは外部のセンサーである程度コントロールできるようになっていた。後半の演奏の2)ではトモミンに光センサーをとりつけてライトで演奏する。
3)で用いられるのは、トモミンと同じくタッパーウェアに組み込まれた楽器だが、容器の中にはスプリング、ピアノ線、ブリキ板、糸、オルゴールの歯などといくつかのコンタクト・マイクが取り付けられている。普段はエフェクターやサンプラーを伴って演奏するが、今日はディレイのみを用いる。
1)nocturne(1999)
1970年代後半から80年代初頭まで、業務用ゲーム機器や電子玩具に搭載されていたサウンド・ICチップをアナログ・シンセサイザーのような形にまとめた自作楽器「1号機」を使用。3曲目で使用する「3号機」と同時期のチップであるが、1号機の方は、抵抗やコンデンサーといった電子部品を外付けすることにより様々な音が作れるアナログ制御、他方3号機は、コンピューターによるデジタル制御である。コンピューターとの相性の良さから3号機の系列のチップは進化を続けて現在に至るが、結果的に1号機の系列のICは絶滅してしまった。
音のチープさや、パラメーターの少なさなど現在の電子音楽作品にとっては物足りない感じかもしれないが、予測出来ない動作をしたり、あらゆる電気現象を取込める柔軟さは、逆に今後の電子楽器を考えていく上で注目に値するのではないだろうか。この愛着のあるチップを使用した楽器のために、本作を作ってみた。
以前からカセットプレイヤーの再生ヘッドを取り出してペン状の形に加工し、カセットテープをスクラッチするという試みを行なってきたが、ヘッドを取り出して自由にしたことにより、カセットテープ以外の磁気記録媒体などからも音が取り出せることに気付いた。
この作品では、文書データが保存されていた5インチのフロッピーをカバーから取り外し、ターンテーブルに乗せて回転(45回転)させ、テープヘッドを当てて再生してみる。またターン・テーブルにのせたフロッピーは、固定されていないため徐々に中心がずれていくが、それによって生ずる回転むらも変調の要素としている。
本来のデータを別の姿に変える試みである。
この作品では、通称「3号機」と呼んでいる自作楽器を使用している。回路の中心部のICチップは、ゲーム機やパーソナル・コンピューターのサウンド出力に、70年代後半から80年代中頃まで使用されいていた。
本来このようなICは、コンピューターからの8ビット、つまり8桁の2進数で送られてくるON/OFFの信号によりコントロールされるが、本機では2進数の数列を人間が読取り、手動でスイッチをON/OFFして値をチップに入力し、音楽を作っていく。
本体表面にある8つの赤いトグル・スイッチが8ビットのデータを決定し、青いボタンは命令の選択、黄色いボタンは選択された命令のデータ値を入力する。赤いボタンはリセットである。
実際の入力は、まず制御したい命令を選択、その命令が2進数でどのように表されるか調べ、その結果をトグル・スイッチに設定、青いボタンを押すことにより命令が選択される。次にそこに入力したいデータ値を2進数に変換(例13=00001101)、それをトグルスイッチで設定、黄色いボタンを押す。
現在の多くの電気製品は、内部的にはデジタル動作しているが、ユーザーインターフェースはアナログ的なコントロールを目指している。人間が機械に対して行なうアクションと内部処理にはかなりのギャップがある。人間がデシタル的コントロールをするという試みをあえて行なってみようと思う。
-音響映画の試み
Paul CELANの詩をテクストとした、電子変調された声によるテープ作品『エコラリー3-CELAN fragment』。この作品を、”オリジナルからのパラフレーズ/変換”という視点から(自作)分析。作品のアナリーゼというよりも、言葉から音響への変換、作品の誕生、そこから別の作品へとremakeされてゆく経過を、音によるドキュメンタリーとして構成。
『音響映画』(映像のかわりに、音のみをシーンとしてモンタージュ)の試み。
2.音響映画『ELECTRANCEL,Who?』上映-約20分
足立智美
上記プログラム参照。写真は1)エレクトリック・ギターとギター・アンプを伴う電子装置による音楽。後半の2)では照明を落とした状態で2つのライトを舞台の2つの光センサーに投射することでトモミンを演奏、最後にライトは観客の手に渡された。
米本実
上記プログラム参照。写真は2)ORGOPPY。3)マン−マシーン・インターフェースに関する考察 No.1では床に広げられた0と1が並んだ楽譜を肩から下げたシンセサイザーに手動で入力。
宮木朝子
資料を基にツェランの詩と自作品の関わり、その扱いの変容を分析。ツェラン自身の朗読、そしてツェランの詩から派生した自作品のコラージュによるテープ作品の上演。